肝保存時における細胞内エネルギー代謝を明らかにするために^<31>P-NMRspectrometerを用いて肝細胞内高エネルギーリン酸化合物を措定した。I.Garlickらが開発した心潅流装置を改良しマウス肝潅流装置の作成を行なった。潅流液としてkrebs-Henseleit buffer solutionを用いた。潅流液の酸素化は95%O_2、5%CO_2を直接潅流液に注入することにより行なった。II.上記作成した肝モデルの常温 (36℃) で潅流中の^<31>P-NMRスペクトルを測定し潅流液を変化した時のスペクトルの変化を測定したが至適潅流量は5ml/minであった。III.36℃で温阻血を加えていった時の^<31>P-NMRスペクトルを測定したが温温阻血10分でβ-ATPは測定不能となり無機リン (Pi) は阻血と併に増大していき阻血60分で前値の200%以上となった。しかし再潅流を行なえば一度消失したβ-ATPは回復したが、この限界は30分であった。IV.低温浸漬保存における^<31>P-NMRスペクトルを測定したが低温阻血においてもβ-ATPは約10分で測定不能であった。Piも阻血とともに増大していったが60分における増大率は160%で温阻血時にみられた変化より優位に低かった。また再潅流を行なえばβ-ATP、Pは前値に回復した。回復の限界は10時間以内であった。V.Ca拮抗剤 (verapamil) を20umol、40umol、80umol前投与した時の温阻血肝における^<31>P-NMRを測定したが、80umol投与において阻血60分においても再潅流時にβ-ATPの回復が認められた。以上、肝依存と関係する状況において、^<31>P-NMRスペクトルを測定したが、本法は非侵装的に、しかも短時間に細胞内高エネルギーリン酸化合物の変動が測定できるため有用であると思われた。
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