1.パラフィン包埋標本を用いた研究。 昨年度に行なった研究結果をまとめた。パラフィン標本のflowcytometryによるDNA解析は上皮小体癌と腺腫の鑑別診断には役立つといえないが、癌の悪性度や予後の予測には有用性があるという結論をえた(日本癌学会第47回総会に発表) 2.新鮮標本を用いた研究。 本年度は、主にこの研究が中心であった。昨年から引き続き原発性上皮小体機能亢進症患者から上皮小体病変の新鮮標本を63個あつめ、flowcytometryによるDNA解析を行なうことができた。標本は、上皮小体癌転移巣が3病変、原発腫瘍が60病変であり、原発病変は、癌5、腺腫51、過形成4である。解析可能でしかも(G_0)/(G_1)の分散度が低いヒストグラムを97%の標本で得た。その結果、明らかなaneuploidを12例で認めた。その出現率は、癌転移巣が100%、病理組織学的癌60%、腺腫8%、過形成50%であった。ただ過形成(MEN-I型症例)の場合にはdiploidの細胞が大部分で、それに加えて小さいが明らかなaneuploid細胞集団があるという型であった。腺腫と転移癌病理組織的癌との間には、aneuploidの出現率に統計的な有意差を認めた。従ってaneuploidの上皮小体腫瘍は癌である可能性が高いことがわかった。過形成すなわちMEN第I型でもaneuploidを高頻度に認めたが、腺腫との間にはその出現率に有意差がなかった。過形成で小さなaneuploid細胞が出現したのは、過形成を起こしている細胞クローンのheterogeneityを示すのかもしれないと推測した。結論として、新鮮細胞のflowcytometryによるDNA解析は、上皮小体癌の病理組織診断の補助検査として役立つとわかった。
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