1.パラフィン包埋標本を用いた研究 (1) 研究対象・方法:パラフィン包埋標本は、癌15例 (原発巣13個、再発巣11個) 、腺腫29例、過形成5例 (15個) である。症例の術後経過観察器官は平均4.4年である。この間の全症例についての高カルシウム血症再発の有無ならびに上皮小体癌症例についての局所再発、転移の有無を調べ、flowcytometryによるDNAヒストグラム解析の結果と対比検討した。 (2) 結果・考察:7病変 (10%) がaneuploidyを示し、病理組織型別のその頻度は、癌27%、腺腫10%、過形成0%であった。癌と腺腫とでは、aneuploidyの頻度に有意差がなかった。ただ癌症例についてDNAploidyと臨床経過との関連を検討したところでは、DNA解析は癌の悪性度や予後を判定する指標として役に立つ可能性がある。aneuploidの癌では再発や肺転移の出現頻度が高い傾向があり、癌死した1例はaneuploidであったからである (統計学的には肺転移の出現率についてのみ有意差を認めた) 。 2.新鮮標本を用いた研究 (1) 研究対象・方法:過去1年9月間に手術した63例の原発性上皮小体機能亢進症患者から得た上皮小体病変の新鮮標本についてflowcytometryによるDNA解析を施行した。内訳は、癌転移巣3 (肺転移1、リンパ節転移2) 、病理組織学的に癌と診断した原発巣5、腺腫51、過形成 (MEN-I) 4。 (2) 結果・考察:明らかなaneuploidyを癌転移巣100%、病理組織学的な癌60%、腺腫8%、過形成50%で認めた。腺腫と転移癌、病理組織学的な癌との間にはaneuploidy出現率に統計的な有意差を認めた。従って、新鮮標本のflowcytometryによるDNA解析では、aneuploidyを示す上皮小体腫瘍は癌である可能性が高いことがわかった。
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