研究概要 |
従来より慢性動脈閉塞症の血流改善前後の血行動態の変化をDoppler法やmercury strain gauge法を用いて解明につとめた. 昭和62年度は虚血肢の血流や重症阻血肢の四肢切断レベルの決定を組織酸素分圧や乳酸代謝面から検討し, 酸素吸入時組織酸素分圧40mmHgの箇所が一応安全な切断レベルであることが判明した. またさらに既存の機器や新しい方法を用いてProstaglandin Izの虚血肢におよぼす血流動態, 特に微小循環の変化を組織酸素分圧の面から解明しようと試みた. PGIzを虚血肢を有する患者に投与した場合, 確かに虚血肢の皮膚温は上昇するが, 症例によっては健側肢あるいは大腿筋の血流がstealされ, かえって虚血肢の皮膚温が低下する場合があることも解った. このような症例にはα-ブロッカーを前もって投与しておくとPGIzの虚血肢に対する効果が有効であることが判明した. 昭和62年度の研究により慢性動脈閉塞による重症虚血肢を切断する場合にその切断肢の一期的治癒が期待し得る切断レベルは酸素吸入時の組織酸素分圧40mmHgの部位であることが判明した. しかし, 切断のレベルをさらに末梢にし, 患肢を少しでも長く温存するために補助的な血行再建術あるいは, 薬物療法などを行うことが望ましい. その際の再建血管が, どの位の期間開存性が得られるか, 再建血管として何を使用するのが最適か, また自家静脈を用いた場合, 静脈弁は温存して順流性がよいか, 弁を破壊して逆流性に用いるのがよいか, さらにまた薬物効果がどの位あるかなどをさらに別の方法, たとえばレーザードプラー血流波形計測などにより血流プロファイルを知ることも必要であると痛感させられた. なおThermographyは無侵襲的に薬効の判定には有用であるが, 実際の血流の増減量などの判定には, さらによい計測機器の開発と総合的な判定が必要と思われた.
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