研究概要 |
当初, 培養肝細胞に低酸素障害を誘導する方法として, ふ卵器内の酸素濃度を変化させて検討したが, 培養液中の酸素分圧の低下は緩徐であり, 当研究の実験モデルとして適当でないことが判明した. そこで, 培養液中に直接酸素, 窒素, 二酸化炭素などのガスを噴入することが可能である浮遊培養法を採用した. 1.ラット肝細胞の分離はコラガナーゼ灌流消化法によった. Viabilityは90〜95%であった(トリパンブルー色素排除試験, 以下同じ). 2.95%O_2+5%CO_2の混合培養(以下, 好気条件)では, 培養液(RPMI-1640+10%牛血清)中の酸素分圧は450〜500mmHgであった. 次に95%N_2+5%CO_2の混合ガス(以下, 嫌気条件)に代えると約15〜20分で酸素分圧は30〜50mmHgに低下し, 低酸素状態を比較的短時間で誘導することができた. 3.好気条件下では, 肝細胞のViabilityは培養1時間後では, 約70%, 2時間後では50%に低下していた. 4.好気条件で1時間培養後, 嫌気条件に代えるとViabilityは20%と著明に低下した. 5.培養液にSuperoxide Dismutase(SOD)を添加すると, 好気条件ではViabilityの改善はなかったが, 嫌気条件でのViabilityの低下を抑制した. 6.培養液中のLDH濃度は, 嫌気条件下で上昇したが, SODの添加により軽度ながら抑制された. 7.培養液中のLipid Peroxide(八木別法により測定)も嫌気条件下で上昇した. SODの添加は, この上昇を抑制した. 以上より, 肝細胞の低酸素障害における活性酸素の関与が示された. ビタミンE, Coenzyme Qなどの抗酸化剤の効果については, 現在検討中である.
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