研究概要 |
(1)肝虚血再灌流障害における活性酸素の関与についての検討 浮遊培養肝細胞の培養液中に、95%N_2+5%CO_2の混合ガスを噴入し低酸素状態(PO_240〜50mmHg)にすると、培養液中にSuperox de Dismutaseを含む群では、細胞のvaiabilityに改善傾向が見られた。また虚血肝不全ラットの死亡率を示標とした実験ではXanthine Oxidaseの阻害剤であるAllopurinolを肝不全誘導前に投与する有意な改善を示した。再灌流直前投与は無効であり、虚血時にすでに活性酸素の発生が起こったものと考えられた。 ラット肝の70%肝葉を90分間阻血、再灌流するモデルを用い、血清GOT,GPT,β-Hexosaminidase、ヘパプラスチンテスト、肝組織水分量、肝壊死組織面積の定量などを示標にして、Allopurinolの効果を検討したところ、その虚血再灌流障害の軽減作用を確認した。また肝組織中のMalondialdehydeをTBA法で測定すると、Allopurinol投与群では虚血および再灌流時のMalondialdehydeの上昇を完全に抑制した。Microcalorimetoryによる虚血および再灌流ラット肝組織片の検討では、対照群では虚血90分後再灌流肝では熱量の回復がなかったが、Allopurinol投与肝では回復がみられた。以上の結果より、肝虚血再灌流障害には活性酸素の関与があり、その発生源の一つとしてXathine Oxidaseによる反応系が考えられた。 (2)ウサギ大腿部移植VX_2腫瘍に対する活性酸素の抗腫瘍効果の検討 大腿動脈よりHypoxanthine.Xanthine Oxidaseを持続注入し、化学反応的に活性酸素(O_2^-)を発生させた。注入前と注入後24時間での推定腫瘍体積き比較では差異は認めなかったが、組織学的には広範な壊死組織の中に島状に腫瘍細胞が散在しているのみであった。この抗腫瘍効果をfree radicalによる作用と認めるためには、今後O_2^-を消去する作用を持つSuperoxide Dismutaseの併用でこの抗腫瘍効果が失われるかなどの検討が必要である。
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