研究概要 |
肝硬変を有する消化器外科患者11例(肝硬変合併肝癌7例, 肝硬変性食道静脈瘤4例)と正常肝症例の9例の計20例に対し, ^<13>C-tyrosine, ^<13>C-aminopyrine, ^<15>N-塩化アンモニウムの3種の安定同位元素化合物を投与し, ^<13>C呼気中回収率及び尿中^<15>N質量比の測定を行い, 肝ミトコンドリア, 肝ミクロゾーム, urea cycleの機能を測定した. ^<13>C-tyrosineの3時間内呼気中回収率は正常肝10.6±3.2%に対し肝硬変合併例では8.2±3.3%と低下していたが有意の差は認められなかった. ^<13>C-aminopyrine2時間内13C呼気中回収率は正常肝9.2±2.1%に対し肝硬変合併症例では2.3±2.2%と有意(P<0.01)に低く肝ミクロゾーム機能の低下が認められた. 3時間蓄尿中の^<15>N-amrcnia/^<15>N-ureaをみると正常肝0.9±0.3に対し肝硬変合併例では3.6±1.5と有意(P<0.01)に高値であり, urea cycle機能の低下が認められた. 肝硬変合併症例における各機能の検討の結果, ^<13>C-tyrosineにより表される肝ミトコンドリア機能は正常肝に比べてその障害度は22%と軽度であった. 一方^<13>C-aminopyrineで表される肝ミクロゾーム機能と^<15>N-amrcnia/^<15>N-ureaで表されるureacycle機能の障害度は正常肝症例に比べそれぞれ69%, 75%と著明に障害されている事がわかった. 以上の検討より肝硬変合併症例における肝細胞内の機能はミトコンドリアよりもサイトゾールにおける機能低下が著明であった. またこの結果より術後も術後も施行可能である^<13>C-aminopyrineを用いた術前・術後の肝ミクローゾームの検討により, 術前における手術安全域の確立が可能であると考えられた.
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