研究概要 |
61年度には, 我々はラットAFP(α-フェトプロテイン)に対するモノクローナル抗体(以下MoAb)に^<10>B化合物(Cs_2^<10>B_<12>H_<11>SH)を結合させ^<10>B-MoAb複合体を作製し, 標的細胞であるAH66細胞に反応させた後熱中性子照射を行なうと細胞障害が現われることをin vitroで示した. 62年度にはin vivoにおける検討を行なった. AH66細胞をラットの上腕部に筋注し腫瘍が1cm大になった時点で^<10>BMoAbを静注あるいは筋注し, 経時的に腫瘍および各種臓器の^<10>B濃度を測定した. ^<10>B-MoAbを投与後, 12時間後, 5日後, 10日後にラットより腫瘍, 血液および各種臓器を採取し, それらの^<10>B濃度を京都大学原子炉実験所において即発α線測定系を用いて測定した. その結果, 12時間後の測定において, ^<10>B濃度が血液中では0.6ppm, 心臓3.1ppm, 肝臓0.6ppmであるのに対して腫瘍においては10.1ppmと著明に高い^<10>Bのとりこみが見られ, ^<10>Bの腫瘍へのtargetingに成功した. さらに経時的に各種臓器と腫瘍の^<10>B濃度の推移を追ってみると, 5日目では腫瘍の^<10>B濃度3.5ppmとまだ有意に高いが, 10日目では他の臓器と同じ程度のとりこみレベルとなった. また筋注によっても, ^<10>B濃度が血中では0.4ppm, 心臓4.3ppm, 肝臓0.9ppmに対して, 腫瘍においては12.4ppmと高く, 同様な腫瘍特異的とりこみが認められた. 上記の結果はモノクローナル抗体を用いたspeciticなtargetingが認められることを意味し, 静注法12時間後には細胞1個あたりに6×10^8個の^<10>B原子が結合していることになりalamらが主張している1個の腫瘍細胞を破壊するのに必要な10^9個/cellの^<10>B原子にかなり近づけることができた. また上記の結果から実際にin vivoの照射実験を行なう際に, 静注後12時間に熱中性子の局所照射を施行するのが至適条件と考えられた.
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