1.ヒトにおける実験:ガストリノーマを有する患者12名の局在診断法としてセクレチン受容体の存在を利用した選択的動脈内セクレチン注入試験を開発して使用した。全例においてガストリノーマの局在診断が可能で、内手術に同意した4例に根治的切除術を施行した。その際迅速血清ガストリン濃度測定法を開発し、術中セクレチン試験を行いガストリノーマがすべて摘出できたか否かを判定した。膵頭十二指腸切除術を施行した3例において根治性を確認した。術後4人とも再発の徴候なく社会復帰している。セクレチン受容体研究の成果と考えられる。 2.ヒト・犬・ラットにおける正常胃粘膜G細胞のセクレチン受容体の研究:ヒトにおいて選択的腹部動脈撮影の際、総肝動脈内にカテーテルを挿入しセクレチン20単位を注入し肝静脈血中ガストリン値の変動を観察したところ基礎値の30±31.6%の上昇が40秒後に観察された。胃切除を受けた患者では肝静脈血中ガストリン値の有意の変動は観察されず、十二指腸粘膜G細胞はセクレチン受容体を有せず、胃粘膜G細胞がセクレチン受容体を有することが示唆された。犬において全身麻酔下に同様の試験をしたところヒトと似て20秒後に118.2±17.6と基礎ガストリン値の11.8±17.6%の有意な上昇を見た。現在犬とラットのG細胞のセクレチンに対する反応性が著しく低く更に種差の検討を行っているところである。 3.結論:ヒト・犬・ラットを用いたG細胞上のセクレチン受容体の機構の研究を進めてきて、ヒトの悪性腫瘍で多発性の多いガストリノーマの合理的根治的切除の原理を確立しえたと言えるが、正常G細胞のセクレチン受容体の研究は今後消化性潰瘍の発生や各種組織のセクレチン受容体との関連において重要であると考えられる。更にmessengerの追求を含めたメカニズムに迫り度いと考えている。
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