研究概要 |
昭和62年度における研究実施計画に対する研究実績を要約すると以下の通りである. 1)レーザードップラー血流計及び超音波トランジットタイム血流計を併用することにより, 腹部臓器血行動態を有機的に掟えることが可能となった. 特にこれまでその測定が困難とされてきた門脈血行動態を明らかにし得た意義は大きいものと考える. 2)プロスタグランディンの消化器臓器血行動態に及ぼす影響について検討した結果, これが肝血流を増加させる作用を有することがわかり, 肝切後の肝再生にとっても合目的な働きをする可能性が示唆された. 3)新しく脊髄より同定されたNewromedin-NおよびNewromedinU-25, NewromedinU-8の臓器血行動態への影響について検討したが, これらは臓器特異的な脈管作動性を有することが判明し, その生理的有義の解明が待たれる. 4)PeptideYY(PYY)は, 大腸に最も密に局在する消化管ホルモンであるが, その膵液分泌及び骨酸分泌抑制作用が注目を浴びてきた. 今回, PYYの膵外分泌及び膵血流に及ぼす影響につき同時観察を行ったところPYYによる膵外分泌低下は, 膵血流低下とよく相関することが明らかになった. すなわち, PYYによる膵外分泌抑制は, PYYによる膵血流低下が部分的に関与する可能性が示唆された. 5)超音波トランジットタイム血流計を用いて, 腹部臓器血行動態に対する術中検索を施行し, 肝動脈, 総肝動脈および門脈血流のヒトにおける絶対値を始めて把握し得, さらにこれら肝血行動態を形成する血管の間における相互関係について興味ある知見を得た. 6)肝切除後の肝血行動態の把握は, 残存肝の予後を占う上で極めて重要であるが, 方法論等の問題, 特に門脈血流測定上の問題があったため, これまで詳細な検討はなされてこなかった. 今回, 新しい血流計を駆使し, 段階的肝切除後の血行動態について, 門脈圧, 静脈抵抗等を十分にモニターしながら検討を行った.
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