研究概要 |
Vx2担癌家兎を用いて高張塩で処理した自己血清の静脈投与により, 投与開始約60分後より観察される腫瘍における融解性の変化を再確認した. 肉眼的, 組織学的および動物の一般状態の観察から, 血清投与による反応は一過性であること, かかる免疫操作によって結果されるかも知れない腫瘍増生の助長(rebound)は見られず, 20〜30mlの処理血清投与を1回だけ行っても生存日数の著しい延長を見た. これについては第25回日本癌治療学会総会にて報告した. 臨床治療実験として, 進行癌患者8例において塩処理自己血清(血漿)の投与を行った. 全例においてPSの改善は見られたと確信する. このうち3例は生存中で, 進行乳癌患者は15ケ月, S状結腸癌, 癌性腹膜炎患者では6ケ月を経過している. 前者は遠路につき通院不能のために入院中であるが, 後者ではCEAの低下, 全身状態の改善をみて外来通院により加療中である. これらの結果の一部は, 第8回アジア太平洋癌学会議(ソウル)および第25回日本癌治療学会総会にて報告した. 作用機序解明への努力として, この現象には, 極めて短時間に発現することから液性因子の中心的関与が, プロテインAの特性や塩処理の意味への推測から免疫複合体の関与が考えられるので, 癌患者おにける免疫複合体の基礎的検討を行った. Clq法, 抗C3法およびPEG沈澱法との異なる測定法により同一検体を測定し, 各測定法間での相関の有無, 疾患や病態との関連とくに同一個体での免疫複合体の性状の変化を追跡した. なお検体を追加中であるが, 同一個体においては手術侵襲の前後において免疫複合体の組成状態に基本的な変化は見られなかった. この知見については第29回日本消化器病学会にて報告した. In vitroでの細胞障害性試験, 分画血清の投与実験(in vivo)など現在遂行中である. なおVx2家兎での実験, 若干の臨床例については第15回日本臨床免疫学会総会においても報告した.
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