研究概要 |
コレステロールの消化管における吸収機序として, ミセルと平衡状態にあるミセル間液相から粘膜上皮細胞に取り込まれる事, 又胆石形成(コレステロール結晶の析出)は, 胆汁中のvesicleから起るという事が判明しつつある現在, コレステロールの胆汁酸ミセル溶液中における溶存分布状態を知る事は, コレステロール吸収の調節や, 胆石生成機序の解明の面から重要と考えられる. 1)胆汁中蛋白の主要成分であるアルブミンが, モデル胆汁中におけるコレステロールの溶存能及び分子活性に与える影響を検討し, 抱合胆汁酸やレシチンが存在すると, 非抱合型胆汁酸においてみられるアルブミンの影響が緩和される事が判明した. 2)胆汁酸ミセル溶液中における, コレステロールのミセル内及びミセル間液相への分布を検索し, ミセル間液相には, コレステロールの水への最大溶存能を, はるかに上回るコレステロールが存在し, その機序及び生理的意義に関し投稿中である. 3)経口的胆石溶解剤として胆汁酸が用いられているが, 種々の胆汁酸ミセル溶液において, コレステロールの分子活性が異なる事が判明し, 胆汁酸の種類によりコレステロールの動態が影響される事が明らかである. 4)臨床的に手術時に採取した患者胆汁中の, コレステロールの溶存分布形式や分子活性及びコレステロールの結晶析出時間が胆石の種類により異なる事が判明し, 病態の解明を試みている. モデル胆汁中に溶存したコレステロールの分子活性とNucleation Timeは正の相関があり, コレステロール胆石症胆汁中においても同様であった. コレステロール結晶析出に影響を与えると考えられる諸因子の影響についても, 現在検討中である.
|