研究課題/領域番号 |
62570610
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
宮崎 耕治 九州大学, 医学部, 助手 (30159173)
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研究分担者 |
中野 修治 九州大学, 医学部, 講師 (40164248)
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キーワード | 胆道癌 / 化学発癌 / 胆道上皮細胞 / 初代培養 / 不定期DNA合成検出法 / アルカリ溶出法 / dimethylnitrosamine / aflatoxinB_1 |
研究概要 |
胆道癌を化学発癌と仮定し、前年度はその発癌化学物質の検出モデルとして、ウシ胆管粘膜上皮細胞初代培養/不定期DNA合成検出法を作成し、既知発癌物質を用いて胆道発癌における発癌物質の接触ルートを推測しえた。しかし、実験動物において胆道癌を誘発しており、しかも経口的に摂取され、生体内で合成される可能性の高いdimethylnitrosamine(DMN)の不定期DNA合成は検出しえず、種特異性と検出感度の二つの問題点が明らかとなったため、さらに鋭敏なアルカリ溶出法を導入し、DMNによるDNA鎖切断を検出し得た。 今年度は種特異性の問題を解決するためにヒト胆嚢粘膜上皮初代培養細胞を用いたところ、DMNによる不定期DNA合成が検出され、さらにウシではラット肝ミクロゾーム分画(S9)添加時にのみ陽性であった20-methyl-cholanthrene(MCA)でもS9なしにこれを誘導し、ヒト胆嚢粘膜においてはMCAが活性化されることも判明した。即ち、ヒト胆嚢では、胆汁中にMCAが存在すれば胆嚢粘膜細胞もDNAを傷害しうる。一方、胆道癌のhigh risk groupである膵胆管合流異常症例において、活性化膵酵素及び、これによる胆汁代謝物であるlysolecithinなどの発癌への関与が示唆されているが、その役割は明らかでない。活性化膵酵素であるphospholipaseA_2とlysolecithinを用いてDNA傷害性を検討したところ、不定期DNA合成検出法では、いずれも検出されず、アルカリ溶出法ではともにわずかにDNA鎖切断を惹起したが、対照に比し有意差を認めなかった。従って、これらは単独では胆道癌発癌のイニシエーターにはなり得ないことが推測された。また、経口的に混入しうる既知発癌物質であるaflatoxinB_1、DMNはいずれも胆道粘膜細胞の核DNAの一本鎖切断を惹起し、胆道癌を誘発しうることが明らかとなった。
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