研究概要 |
研究の最終年度にあたる今年度は、ヒルシュスプルング病ラットを実験モデルとして、無神経節腸管のアセチルコリン受容体の局在を検討した。 方法は、ヒルシュスプルング病ラット(動物繁殖研究所、体重20g)を用い、尾静脈より〔^3H〕quinuclidinyl benzilate(以下〔^3H〕QNB)25μCiを30分かけて注入した後、開腹により胃、拡張した小腸、狭小な結腸を摘出した。摘出標本はドライアイスアセトン(-80℃)で急速凍結し、5μmの凍結切片を作製した。さらにディップ法により乳剤をかけ、4週間露出後、現像し、光顕的に観察した。また摘出標本はソルエン350に溶解し、液体シンチレ-ションにて放射活性を測定した。 その結果、消化管部位別の放射活性は、組織10mg当り、胃10,000cpm、小腸上部15,000cpm、小腸下部8,000cpm、結腸6,000cpmであった。またオ-トラジオグラフィ-では、胃、小腸上部および下部のムスカリン様アセチルコリン受容体の局在を示す銀粒子は、正常ラットと同様に粘膜層、平滑筋表面、アウエルバッハ神経叢周囲に認められた。また神経叢を欠如した結腸では、粘膜層と平滑筋表面に銀粒子の配列を認め、正常腸管との差異はみられなかった。 本研究の最終目標は、ヒルシュスプルング病患者の手術時摘出腸管について検討することである。しかし、摘出標本についてはアセチルコリン受容体の検出法を未だ確立しておらず、今後の課題となった。
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