研究概要 |
体内型人工食道の実用化にとって最大の問題点である縫合不全と狭窄を回避するためにプロテーゼ内腔の速やかな上皮化を目的として実験を行った. 1)Micro Poreを有するSteal Meshを巻いて直径1.5cm長径5cmの管を作り人工食道用プロテーゼとした. 2)Steel Mesh管を雑種成犬腹部皮下に有茎大網を巻き埋没, また広背筋筋内に埋没する2法により埋没後4週にて良好な結合織管を作製した. 3)皮下あるいは筋肉内埋没プロテーゼに有茎皮膚を意図的に迷入させることにより部分的に皮膚の重層扁平上皮がプロテーゼ内に拡大する事を認めたが, その拡大の程度はごく小さく, また感染による実験失敗例もみられた. 次に感染回避と上皮化促進を目標とした. 4)感染回避として十分な抗生剤投与を行いつつ迷入皮膚と体外を隔離するために筋肉上に皮下組織とともに皮膚を残存させる島状迷入と皮下組織のflap上に皮膚を残すタンザク状迷入の2法考察した. 5)Epidermal Grocoth Factor(EGF)をOsmotic Pumpにてプロテーゼ内腔面持続投与(1μg/kg)を行いEGFによる上皮化促進の有無を検討した. すなわち有茎大網埋没と広背筋筋肉内埋没の2群のプロテーゼに対し島状及びタンザク状の皮膚迷入法を行い, さらに各々にEGF投与群と非投与群を作製した. 9例に前記2法の皮膚迷入にEGF投与を併用したが, 1例で皮下組織のみ良好な増生を示したが上皮が良好に伸展拡大した例は認められなかった. プロテーゼ内腔の結合織増生の程度はEGF投与群9例と非投与群3例の比較では両群に差は認められず, EGFの結合織増生効果は確認できなかった. 以上より皮膚迷入法はプロテーゼ内腔面上皮化法として不十分であると思われた. このため新たな内腔面上皮化法として 6)大網中皮細胞浮遊液及び口腔粘膜上皮細胞浮遊液の作製とプロテーゼ内腔へのCell-Seeding.7)EGF投与濃度の増量. 以上の2実験につき実験検討中である.
|