研究概要 |
StageII,IIIの治癒切除可能な胃上部癌で,全摘+脾合併切除を必要とする症例を無作為に摘脾群(10例)と摘脾+脾自家移植群(9例)の2群に分け,移植脾の生着・再生状況および摘脾群と比べてどのような有用性があるかについて血清学的因子を中心に検討した。移植方法はKusminskyらの方法に準じ,脾の30〜40%の量を1.0×1.0×0.5cmの小組織片として閉腹前に主に横行結腸間膜,小膜間膜内にポケットを作成し数個ずつ分散移植した。術後重篤な合併症はみられなかった。 ^<99m>Tcー熱処理赤血球を用いた脾シンチグラフィ-では術後3カ月以上経過例中6例(75%)に陽性所見(集積像)が得られ,脾のもつ貧食能,biological filterとしての機能が再生されているものと判断された。 血小板数,末梢血リンパ球数,免疫グロブリン(IgA,IgG,IgM),細胞性免疫パラメ-タ-(OKT_3,OKT_4,OKT_8,OKT_4/OKT_8,NK活性)の術後推移に関しては両群間に有意な差はみられず,移植再生脾の血清学的因子に与える影響については明らかにすることができなかった。 さらに症例数を増やし移植脾の機能,感染抵抗性,免疫化学療法との併用効果,遠隔成績におよぼす影響など種々の検討を要するが,本術式は胃癌手術の根治性を満足し,かつ脾再生も得られたことから胃癌の根治術式(全摘+摘脾+脾移植術)の一つとなりうる可能性があるものと考えられた。
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