研究概要 |
小児肝癌37例, 神経芽腫21例, Wilms腫14例について腫瘍細胞及び正常胎児の細胞について核面積(N), 細胞面積(C), N/C比を画像解析装置を用い解析した. それら成績と治療及び予後との関係を分析した. 小児肝癌では正常肝細胞の核面積(N)(28.5±3.2μ^2), 細胞面積(C)(215±41.3μ^2)N/C(0.13±0.02)であるが, 肝芽腫各細胞型ではN(28.4〜34.4μ^2), C(46.6〜140.5μ^2)に対し, 成人型ではN(72.3±15.5μ^2), C(240.2±61.3μ^2)を示した. 神経芽腫では腫瘍細胞の核面積は1歳未満, 1〜2歳, 2歳以上で著しく異なり, 年齢と共に核と細胞の著しい増大と異型性を示した. 腎芽腫では核面積は通常のfavorable type,unfavorable typeで著しい差異を示した. 以上の計測成績に基づいて小児肝癌では新しい組織分類を行った. 予後良好群は純粋に肝芽腫細胞よりなるもので, このものは間葉系組織の混在を認め, 化学療法に良く反応した. 予後不良群では成人型を混ずる肝芽腫及び成人型肝癌で化学療法に感受性の低いことを示した. 神経芽腫では予後良好な1歳以下では形態的には小型で未熟な細胞形態を示した. 腎芽腫では通常のWilms腫(favorable type)は胎児性腫瘍の代表とも考えられ細胞学的にも著しく小型で均一性を示した. 小児癌はembryonit tumorと言えるが, 核, 細胞共小型で均一な形態を示し, 正常胎児組織からの偏位は少ない事が示唆され, 未分化と言うより未熟な細胞形態を示し, この事が化学療法によく反応する理由と考えられた. 一方神経芽腫では加齢と共に腫癌細胞は大型化し, 異型化し, 治療に対し抵抗性の増大をみた. 以上細胞形態像の差こそが化学療法の感受性の差異や予後を左右する大きな要因と考えられた.
|