研究概要 |
1.今回補助の実体顕微鏡、カラーカメラ装置一式により、脳微小循環動態が鮮明に観察し得た。2.人工心肺により20°C以下の超低体温とし、低流量体外循環を行うと、定常流では約1時間後よりPlasma Skimmingを伴うSludgingが発生し、2時間後には、20μ以下の動静脈数の著しい減少(虚脱)と残存血管の10-20%の径の増大が観察された。また、静脈系で流方向反転が高頻度に観察された。3.一方、脈動流群の実験に置いては以上の変化(Plasma Skimming,Sludging,細小動静脈虚脱、血管径の変化)は極く軽度かつ可逆的であり、超低体温低流量体外循環における拍動流の優位性が微小循環の面からも証明された。4.以上の知見の明確化のため、60分循環停止の実験を加えた。循環停止直後は血液のSludgingは逆に少なく、特に細静脈(15-30μ)において血管径の変化が著明であった。これは、2で見られた細小動静脈虚脱とともにNorwoodの言うNo-reflow現象を直視下に証明したものである。5.以上の知見は国内外でも未発表の全く新たな知見である。これを"Brain microcirculatory disturbance during and after ischemia"と命名し発表する予定である。6.昭和60年度文部省特定研究で得られた脳組織ガス分圧上の知見は昭和61年、63年日本胸部外科学会総会で発表し、Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery誌に掲載予定(1989 March)である。本研究ではそのテーマを発展し直視下に明らかにした。超低体温低流量体外循環における拍動流の必要性を訴え、また研究手法上も新たな方法論を拓くものとして、昭和63年10月第41回日本胸部外科学会総会にてその成果を「超低体温体外循環における脳微小循環動態の直視下観察」として発表した。7.今後生化学的知見の明確化と一層の画像の明瞭化のため若干の追加実験を予定している。更に発展せしめ、脳組織細胞内PHの動態を明らかにすべく次の研究を計画している。
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