研究概要 |
1.62年度の研究によって得られた主な知見は次のとおりである. (1)血栓予防のためワーファリン等に併用した抗血小板剤の投与量は, チクロピジン100〜300mg, アスピリン10〜30mgで, これらの抗血小板剤による血小板凝集能の抑制は個人差が大きくまた変動もあるため, 定期的検査によってその効果を確認する必要があることが明らかとなった. (2)かかる抗血小板剤による凝集能抑制の調節にはADP凝集能とコラーゲン凝集能を併せ評価することが重要であり, 従来よりいわれていたアラヒドン酸凝集能は鋭敏すぎて指標となりにくいことが明らかとなった. (3)前述したADP凝集能とコラーゲン凝集能の抑制が不十分な症例では一過性脳虚血発作を起こす例があり, 完全な血栓予防にはこれらの検査値の適切な抑制が必要であることが明らかとなった. (4)人工弁音周波数スペクトラムの解析により, 正常に機能している多くの人工弁では500Herz〜1.5KHerzに最大音域をもつなだらかな減衰曲線を描き, 開閉異常を呈した症例では, この曲線のある特定域に深いdipを生じることが明らかとなった. 2.今後の研究の展開 (1)前年度実績にもとづく血小板凝集能の至適域への調節により, 多数症例において血栓予防の実績をつくる. (2)人工弁の種類の違いによる人工弁音周波数特性の違いを明らかに, またモデル回路を用いて工学的な裏付けを検討する. (3)開閉異常の程度による周波数特性の違いを明らかにする. (4)RIをラベルした血小板シンチグラフィーから, 周波数特性の変化と血栓集積との関係を明らかにする. 以上が主な課題となる.
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