研究課題
一般研究(C)
本研究は、重症弁膜症の開心術後の黄疸性肝障害の成因を肝の血行動態、血清生化学、さらに形態に視点をおいて検討してきた。1.血清生化学面:胆汁酸負荷試験時の胆汁酸の動態から、術後早期の胆汁うっ滞の程度を予測させる因子としては、胆汁酸負荷試験の胆汁酸最大値と血行動態の指標としての混合静脈血酸素飽和度を挙げ、前者が20μM/Lで、かつ、後者が60%未満の症例では、術後の心機能の悪化により、胆汁うっ滞性肝障害を惹起しやすい、と結論した。また、開心術後の高ビリルビン血症の病勢の把握と予後の判定に、ビリルビン分画、特にB_δ、B_c、及びB_δ/B_c+B_δの追跡が有効であり、総ビリルビン値が高値でもB_δが優勢ならば、何れ、高ビリルビン血症も回復する可能性が高いと結論した。更に、開心術後早期に発症した急性腎不全の検討から、ビリルビン値の漸増を呈し、黄疸を特徴としたうっ血型の肝不全を呈した症例は、全て難治性心不全が主因として存在しており、これらに対する予防策としては、早期から臓器循環を維持するべく、心不全の治療と早期からの利胆を促進する薬剤等の投与が、有効となる場合のあることが示唆された。2.形態面:経静脈性肝生検から、急性期の血清学的変化の検討では肝逸脱酵素の有意の上昇はなく、また、胆汁の血中への流出は胆汁酸で見る限り、有意の増加を示さなかった。さらに、肝被膜の損傷もなく、以上から急性期には安全に肝生検ができた。しかし、有効性に関しては、鉗子の開閉制限があること、厚い血管壁を採取する可能性があること、などから不十分であると結論した。3.血行動態面:熱稀釈法による肝血流量測定では、犬の肝静脈が多枝に分枝しており、カテーラル插入による分枝の血流量は、ある程度測定できるものの、全肝血流量が測定できず、各個体間での分枝の差異測定の成否などにより、一定の評価ができない状況である。
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