研究概要 |
ラットを, 1群:生後8〜12日目に乳児ラット(n=24), 普通飼料で飼育した成熟ラット(n=5), 3群:トルラ酵母を主体とした低セレン(Se), 低ビタミンE飼料で3ヶ月飼育した成熟ラット(n=5)に分類した. 心拍動のあるうちに心臓を摘出し, Nqnks液につけ105,000g1時間遠心した後, その上清液をSe, glutation peroxydase(GSHPx)の測定試料とした. 一方, 2群, 3群のラットについて, Tylerの方法で心筋ミトコンドリアを分離した. 測定は, Se含有量はフレームレス原子吸光法により, HSHPx活性はglutation reductaseの補酵素のNADPHの変化を測定し, 1分間に0.5μMのNADPHを酸化する酵素活性を1単位とした. ミトコンドリア浮遊液に含まれるCoQ_<10>は高速クロマトグラフィにより, 過酸化脂質は蛍光法により定量した. なお, 心筋, ミトコンドリアの蛋白量は, Lowryの方法で行ない, 蛋白1mgあたりに換算し, T検定により統計処理し, 比較検討した. (結果)Se:1群 1.42±0.24×10^<-1>Mg/mg蛋白, 2群 0.28±0.04×10^<-1>, 3群 0.31±0.06×^<-1>であり, 2群3群間に有意差は無かったが, 1群は有意に高値を示した. GSHP×活性:1群:4.76±1.05×10^<-1>単位/mg蛋白, 2群8.03±0.57×10^<-1>, 3群 3.38±0.32×10^<-1>であり, 1群3群は2群と比べて有意に低値を示した. CoQ_<10>:2群 1.66±0.59Mg/mg蛋白, 3群 1.62±0.57 と両群間に有意差は無かった. 過酸化脂質:2群8.96±4.4nM/mg蛋白, 3群19.26±3.7で3群は有意に高値を示した. (考察), 乳児ラットはSe含有量が低いという報告が多いが, 今回測定で, 乳児はむしろ高い結果となった. しかしGSHPxは成熟ラットと比べ有意に低く, また低Se, 低ビタミンE食で飼育したラットは心臓内Seは低下しなかったが, GSHPx活性は有意に低下し, それに伴い過酸化脂質は有意に増加した. 乳児ラットの心筋の特殊性を示唆する結果が得られた.
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