研究概要 |
開心術後の急性肝障害の発生機序の解明ならびにその発生を予測する有用な指標の確率を目的として、主として肝静脈血酸素飽和度を中心とし臨床的検討を行った。 先天榛性心疾患17例,後天性心疾患20例,計37例の開心術症例に対し、術中肝静脈にカテーテルを挿入し、術後、肝静脈血酸素飽和度(ShvO_2)のモニタリングを行い、術後の肝機能の程度、術度、の血行動態との関係を検討した。[結果]1.14例において、mーShvO_2(ShvO_2が最も低値をとった24時間での平均値)は30%未満であった。うち11例において、肝障害が発生し、mーShvO_2とALT,TーBil,GLDHの最高値との間に、いずれも有意な負の相関が認められた。他の23例では、mShvO_2は40%以上であり、うち20例で肝障害は発生せず、mーShvO_2とALT,TーBil,GLDHの最高値との間に有意な関係は見られなかった。2.mーShvO_2が30%未満の14例では、mーShvO_2と肝静脈血の乳酸,ビルビン酸化(HV L/P)の平均値(mーShvO_2と同24時間)との間に、有意な負の相関が認められた。3.mーShvO_2と全身の血行動態指標(mーShvO_2を求めたと同24時間の平均値)との関係をStopwise法による重回帰分析より検討した結果、SvO_2とCVPがmーShvO_2に有意に関与し、その関係は、mーShvO_2=1.50(SvO_2)-2.07(CVP)-32.8(r=0.81,F=27.0,P〈0.001)であった。4.術前,中,後の9因子とALD scoreとの関係をStepwise法による重回帰分析により検討すると、説明変数として、ShvO_2とCVPが選ばれ、その関係はALD score=-0.056(ShvO_2)+0.2D(CVP)+1.93(r=0.82,F=31.3,p〈0.001)であった。 以上より、開心術後急性肝障害の発生要因は肝の低酸素症であり、高CVP,低心拍出量を主とする血行動態異常がこれに関与することが示された。またShvO_2は肝障害発生の予測に有用な指標となり、そのcriticalpointはおよそ30%と考えられた。
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