悪性脳腫瘍に対する腫瘍壊死因子(TNF)の抗腫瘍効果を検討し、前年度(昭和62年度)に次の結果を得た。 (1)フィッシャーラットにOK432と大腸菌エンドトキシンでTNFを含む血清(TNS)を作成した。(2)TNSの抗腫瘍効果を同系ラット脳腫瘍9Lを用いてin vivoで検討した。9Lを脳内接種して1日目、4日目にTNSを静脈内投与することによって有意に生存日数を延長させた。(P<0.05)。(3)TNSはin vitroにおいて、9Lに対して有意差をもって細胞障害、細胞増殖抑制効果を示した。(4)DEAEセファデックスA50およびG-200カラムを用いてTNSの部分精製を行い、第4分画にTNF活性を認めた。 以上の結果を踏まえて昭和63年度には9Lを背部皮下に接種し、10mm径に達した時点で遺伝子組換えTNF(r-TNF、大日本製薬)を投与する実験を行い、以下の結果を得た。TNF投与は1週間に1回の割で計5回を腫瘍内又は静脈内投与した。 (1)腫瘍接種のみの対照群の生存日数は73.8±9.7であったのに対し、TNF腫瘍内注入群では78.3±6.1、静脈内投与群では77.4±6.3とやや延長する傾向にあったが、有意差は認められなかった。(2)遺伝子組換インターロイキン2(r-IL2)で活性化したラットLAK細胞との併用実験を行った。その結果は、LAK細胞のみを静脈内あるいは腫瘍内注入群では対照群と有意差は認められなかった。しかし、r-TNFとLAK細胞を混合した5回静脈内投与した群では、対照の73.8±9.7日に対し100.3±11.4と有意に(P<0.005)生存日数を延長させた。 以上の結果より投与経路、投与方法をさらに検討することにより、より効果的で臨床応用可能なTNFの使用を考えていきたい。
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