研究概要 |
Fluid percussion法によりラットの左頭頂葉下部に脳挫傷を作成し, 脳代謝異常亢進状態の起こる2時間を中心に以下の観察および新たな知見をえた. 1.Wister rat雄, 17匹を用い, DC potential(DC)を挫傷後2時間モニターし, 挫傷側DCのnegative shiftの発生を見た群(B群)10匹のうち6匹において, DCの変化に合わせて14C-deoxygulcoseを静注し, 局所脳グルコース代謝率(LCGU)を求めた. 残り4匹においては, 同様に^<14>C-iodoantipyrineを静注し, 局所脳血流(LCBF)測定を行った. DCの変化の見られなかった群(A群)7匹は, 挫傷後2時間目に, 各々4匹と3匹においてLCGUとLCBFを測定した. A群では挫傷側の大脳皮質のLCGUとLCBFは対側に比しわずかに低下する傾向を示したが, 有意差はなかった. B群では挫傷側大脳皮質のLCGUは対側のほぼ2倍に亢進していた. 一方血流では, 挫傷側頭頂葉に周囲と比し相対的血流亢進帯域が認められ対側大脳皮質のLCBFをわずかに上回ったが, 他の挫傷側大脳皮質各部位のLCBFは対側に比し軽度低下していた. 2.イオンエクスチェンジャーを用いたイオン選択性ガラス微小電極, および微小電極用電圧増幅機を用い8匹に脳挫傷辺縁部の細胞外カリウムイオン濃度を測定した. 4匹においては細胞外カリウムイオン濃度の上昇を認めなかったが, 3匹で脳挫傷作成後30分から1時間の後に急激な上昇を認め高値が持続し, 1匹では一過性の上昇を繰り返した. 以上の結果より脳挫傷に局所脳グルコース代謝の異常な亢進が起こった場合, 細胞環境が悪化している挫傷辺縁部にはこれがover loadとなり神経細胞の死につながることが示唆された. 今後他の各部位での細胞外カリウムイオン濃度, 低酸素や低血圧の影響, 各種脳保護物質(バルビツレート等), ステロイド等の効果(特に局所脳グルコース代謝異常亢進を抑制する効果)を観察する.
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