研究概要 |
本研究で用いたTM-1は、当教室で樹立したヒト悪性glioma細胞株であり、無血清培地で増殖する。 1.TM-1由来培養上清からの抽出物作製方法 TM-1を無血清培地にて培養し、その上清液を採取した。これを遠心(2,500rpm)後、濾過(0.22μm)し、さらに超遠心(10万G)を行い、上清液を得た。これを1%酢酸にて透析後、凍結乾燥し、培養上清液からの抽出物を作製した。 2.抽出物のTM-1とヒトfibroblast細胞に及ぼす作用効果の検討 (1)〔方法〕TM-1を蛋白量10μg相当の抽出物を加えた培地で培養し細胞数の変化を経時的に測定した。〔結果〕細胞数は経時的に増加し、培養11日目では抽出物を加えない群と比較し約3倍であった。 (2)〔方法〕TM-1とヒトfibroblast細胞(Fib.)を各種の量の抽出物を加えた培地で培養し、tritiated thymidineの取り込みを測定した。〔結果〕TM-1およびFid.のいずれも、加えた抽出物の量の増加に伴いtritiated thymidineの取り込みは増加した。蛋白量10μg相当の抽出物の添加で基礎培地と比較し、TM-1は約5倍、Fid.は約8倍の取り込みを示した。 (3)〔方法〕抽出物を1M酢酸にて溶解後、遠心および濾過し、これをBio-Gel P-60を用いたゲル濾過にて分画した。凍結乾燥にて濃縮溶液を作製し、TM-1とFib.のtritiated thymidine取り込みを指標として、増殖活性を有する分画の検討を行った。〔結果〕TM-1およびFid.のいずれにおいても、分子量12,000-6,000の間の分画に活性を有し、5つのピークを認めた。 以上の結果をもとに、今後さらに、TM-1由来培養上清液に含まれる増殖促進因子の性状分析を進める予定である。
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