研究概要 |
脳腫瘍に対する治療法には手術, 放射線, 化学療法とあるが中でも悪性腫瘍の治療成績は悪く2年生存率50%以下である. 正常細胞に対する傷害を少なくし, 且つ腫瘍細胞のみを選択的に傷害できるような方法が必要である. ヘマトポルフィリン誘導体は腫瘍組織に選択的にとり込まれるといわれ, 631nmのレーザー光をあてると光化学反応を惹起しその際に発生する酸素により腫瘍細胞が傷害されるといわれている. 1.T9 gliosarcoma cellを培養しF344, Rat豚内にT9 cellを10^6コ移植し脳腫瘍モデルを作製した. 6匹のコントロール群では平均27.5(6.0S.D)日の生存日数であった. 腫瘍径は8〜9mmとなり全身衰弱死であった. 2.この脳腫瘍モデル作製後5日目にヘマトポルフィリン誘導体を10mg/kg体重の割合に腹腔内投与し生存日数を調べた. 14匹に施行したが前者よりやや長く, 29.4(4.4S.D)日であった. 全例腫瘍径が7mm以上で腫瘍死であった. 3.同上の脳腫瘍モデルを作製後5日目にヘマトポルフィリン誘導体を同量, 腹腔内投与しておきその48時間後に全麻下にアルゴンダイレーザー治療を開頭し施行した. (1).レーザーファイバー先端がcylinder型のものを腫瘍内へ5mm挿入し, 150mw, 15分照射群7例, (2).レーザーファイバー先端がflat typeのものを腫瘍表面に接触させ同量を照射した群1例, cylinder typeでの治療群には腫瘍内出血が多くみられ17.6(9.0S.D)日の平均生存日数しか得られなかった. flat typeの群は31日の生存日数が得られた. しかし, cylinder typeでの治療群の中の腫瘍内出血例を除くと31日間の生存例も2例にみられ腫瘍が壊死におちいり空洞化していた. 以上の実験では発熱はみられず温熱効果はないと考えられるが今後は温熱効果も加えて成績を向上させたい. 又他種の光増感物質をも使用し適当なレーザー波長を使い実験脳腫瘍の治療を試みる予定でもある.
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