悪性グリオーマは、主として局所に限局した浸潤性腫瘍である。しかも、臨床的に診断されたグリオーマは、他の癌では手術対象にならない全摘出不可能な症例が大半である。それ故、外科的に切除可能病変か否かにより、脳腫瘍の治療方針を選択する必要がある。視床部や脳幹部の腫瘍の様に手術切除不可能な病変では、放射線療法の他には、血液脳関門を通過しやすいニトロソウレア系制癌剤を投与するにすぎない。ニトロソウレア系制癌剤は、骨髄抑制が強く、6ー8週毎にしか全身投与できない。またこの制癌剤は、体内での半減期も短く、その代謝産物に抗腫瘍効果がないことから、必ずしも適切な制癌剤ではない。本研究では、主として手術可能病変に生じた脳腫瘍の治療方法の確立を目的として行われた。脳表面に広く分布した脳神経機能の局在のために、腫瘍の部位診断が正確に行われても、神経欠落症状を残さずに腫瘍全摘出術を行うことは不可能であった。それ故、腫瘍摘出術後、放射線療法を行うこと共に種々の制癌剤の投与が試みられてきた。しかし、制癌剤の大半は神経毒性を有している事から、血液脳関門を通過するニトロソウレア系制癌剤の他には、腫瘍切除腔内への制癌剤の投与にも自ずと制限がある。脳実質内には、リンパ組織が存在しない事から、BRMを用いたいわゆる能動性免疫療法では、効率良くEffector細胞を脳実質内に誘導する事は不可能であった。一般に脳腫瘍患者は、全身痙攣を生じる危険性が高く、その予防のために抗痙攣剤の投与を受けている事が一般的である。以上の様な諸条件下にある脳腫瘍患者の治療を行うには、腫瘍切除後、放射線療法中に制癌剤の感受性テストを行い、制癌剤の全身あるいは局所療法を選択する必要がある。また、病状早期より免疫機能低下が認められるので、免疫療法を行うには、BRMによる能動性免疫療法は効果乏しく、LAK細胞等による養子免疫療法の有用性が示唆された。
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