研究概要 |
1.頭蓋内原発胚細胞腫症例における染色体分析Klinefelter症候群に本腫癌の発生と認めた例が近年報告されており, 本腫瘍発生の遺伝的背景因子として注目されている. 縦隔胚細腫ではKlinefelter症候群合併例がさらに高頻度に報告さている. Klinefelter症候群の表現型は様々であり, 外型のみによる診断は容易ではない. そこで本腫瘍症例において, 末梢血リンパ球を用い染色体分析を行なった. 現在まで弾性7例, 女性1例の計8例におけるKaryotype分析結果は, 46XYまたは46XXで染色体異常を認めていない. 今後さらに臨床例において分析をすすめる予定である. 2.本腫瘍の培養細胞株確立については, 手術標本および骨髄腔内播種例の髄液中細胞などを材料として現在検討をすすめている. 3.腫瘍マーカー値に基づく頭蓋内胚細胞腫の臨床的病期分類と治療 当科における症例の分析結果より本腫瘍の50%以上の症例で, 血中あるいは髄液中AFPあるいはHGが陽性であることが判明した. 従来の放射線照射を主体とする治療の結果では, 5年生存率はマーカー陰性例85%, マーカー陽性例25%で, この両者間に統計学有意差を認めた. そこでこれに基づき, 臨床的病期分類および治療法選択を試みた(N-Arita, etal.Prog in Exp Tidmor Res30=287-295, 1987). マーカー陰性例は原則として全脳・脊髄放射線照射, 再発例および神経管外転移例ではPVB両方を主体とする化学療法の併用を行なう. マーカー陽性例では, 髄液中HCGのみ陽性の例はマーカー陰性例の治療に準じる. マーカー中等度陽性例では手術および放射線照射で経過をみる, マーカー高値し血中AFP400ng/ml以上, HLG100mIV/ml以上)例は初回治療時より手術, 放射線照射にPVB療法の併用を行なう. 現在, このような病期分類に基づく治療法の選択により, 従来予後不良であったマーカー高値例にも生存例が増加している.
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