脳虚血時には、energy rich phesphorous濃度の変化とともに、lactate濃度が増加することが確認されている。今回、proton magnetic resonance spectrescody(^1H-HPS)を用いて、猫の虚血モデルでのlactateの濃度変化を測定した。(研究方法)成猫9匹を、A群:未処置群3匹、B群:経眼窩的に1側中大脳動脈閉塞による軽度虚血群3匹、C群:一側中大脳動脈閉塞及び両側頸動脈閉塞による高度虚血群3匹の3群に分類し、虚血時間、虚血巣の大きさ、'H-MRSによるlactate濃度、lactate/NAcAspa比の変化について検討した。r-CBFは、Heat clearance法により、又NMRは、Pickerの1.5Tの超電導NMRを使用した。 (研究結果)(1)Heat clearance法によるr-CBF測定では、A群:48±10ml/100gm/min、B群:25±9ml/100gm/min、C群:14±8.5ml/100mg/minであった。(2)^1H-MRSによるlactateの変化は、C群において著明であり、C群では閉塞早期よりlactate量は増加し、Lactate/NAcAspの比はA群では、0.7〜0.3、B群では1.8〜0.4、C群では1.4〜2.5であり、Lactate量の増加を認めた。(3)虚血巣の大きさでは、B群では、基底核〜頭頂部の一部に虚血巣を認めたが、C群では、閉塞側の大脳半球の広範囲に虚血性変化を認めた。 (結論)^1H-MRSによりlactate濃度を測定する場合、lactateは細胞内濃度が、1-10mMの濃度であるのに反し、水はlactateの1万倍の濃度であるため水の信号をどのように消去するかが問題である。今回の実験で、^1H-MRSにより、脳虚血時でのlactate濃度の測定が^1H-MRSにより測定可能であること、又lactateの濃度変化は、虚血巣の程度と虚血時間に相関することが判明した。以上より、^1H-MRSにより、虚血時でのlactate濃度変化を経時的に測定することにより虚血性病変の診断及び治療に有用であることが判明した。
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