研究概要 |
悪性神経膠種の補助化学療法については, 近年, 多剤併用に加えて免疫賦活剤等の投与を行うなど様々な工夫がなされているが, 未だ充分満足のいく補助療法は確立されていない. その要因の1つに脳腫瘍細胞の薬剤に対する耐性の出現が挙げられる. そこで我々はラットC6グリオーマ・ヒトKY, KC細胞株を親株として用い, 突然変異剤(EMS)存在下に, コルヒチンの濃度を段階的に増加させ, 各段階にて最も耐性を示し, またアドリアマイシンやビンクリスチンにも交叉耐性を示す株を分離して, これらを再び親株として, コルヒチンに対し親株の5〜10倍の耐性を示すC_6-ch^R-5-8-6,KY-ch^R-8-9-4,KC-ch^R-1-2-5を得ることに成功した. これら耐性株の他の薬剤に対する交叉耐性を細胞集落形成能を用いて調べると, ADR,VBL,VCR,AcTD,Puroに対しても同程度の耐性を示したが, ACNU,Cis-DDPに対しては交叉耐性を示さないことが判明した. ビタミンAの一種であるレチノールアセテート, 合成イソプレノイド(SDB-ethylenediamine,PMB-decaprenylamine)を細胞内増殖に影響を与えない濃度でコルヒチンやADRと併用すると, 親株と同程度まで耐性度の克服が可能であった. KC-ch^R-1-2-5株を用いた細胞内ADR濃度を測定すると親株に比し約1/2に減少していた. 細胞形態, 蛋白合成, 蛋白リン酸化等には特に変化を認めなかった. 現在, ヒトKNS42, 210株を用いたACNU, 5FU耐性株の分離を行っており, また, 高濃度耐性株の分離をも進めている. 今後は, さらに薬剤耐性機構の解明と克服に研究を展開していく計画である.
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