研究概要 |
定電位直流通電と抗癌剤を併用して相剰効果を得る目的で実験を行った. 特殊センサーを用い各種抗癌剤の帯電性を検査した結果Endoxan, Adriamicin, ACNUの3種が負に帯電していることが判った. これら薬剤を用い実験を行った. 実験動物に8〜9週令のC_3Hオスマウスを用いた右大腿部に線稚肉腫の単一細胞浮遊液を移植した. 腫瘍が直径8mmに達したら通電(0.8mA30〜120分)や抗癌剤の投与(通電前20分)を行った. 実験の各項目は1)無処置(腫瘍のみ移植)群, 2)腫瘍内通電群, 3)Endoxan単独投与群, 4)Adriamicin単独投与群, 5)通電はEndoxan併用群, 6)通電とAdriamicin併用群である. 各群は8〜10匹としてそれぞれの腫瘍の直径から平均腫瘍サイズを算出し, 腫瘍のサイズが2倍になるまでの日数(doubling time)の差(growth delay)及び通電後120日後における治癒率を求めた. 通電のみを行った群では通電時間の長さとgrowth delayは明かに関連していた. 治癒率は120分通電では46%, 60分では10%であった. Endoxan100mg/kgと150mg/kg腹腟内投与を比較すると150mgの方は治癒率は38%を得たが100mgではすべて再発した. Endoxan100mgと通電60分を行ってみると著しいgrowth delayと治癒率70%が得られた. この成績を腫瘍内電極を陽極にした場合と陰極にした場合を比較すると陽極が約85%, 陰極が52%であった. Adriamicinを同様に4mg/kgと8mg/kg分けて投与すると4mgの群はすべて再発し, 8mgの治癒率は13%であった. そこで4mg/kgと通電を併用してみるとgrowth delayの延長と治癒率の改善がみられたが, 33%に止った. 通電と抗癌剤の併用療法を行った腫瘍の病理組織学的検索では通電単独群よりも明らかに広範囲に腫瘍細胞の変化がみられた.
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