悪性腫瘍に対する定電流直流通電法(DCT)の効果について基礎的研究を動物に移植した悪性腫瘍に対しDCTを行いdoubling timeを測定し無処置対照群と対比した。用いた電極数は腫瘍内に1〜3本でありそれぞれ本数別にDCT後のdoubling timeを測定したところ対照群に比較して電極数を増加させる程腫瘍の増大が遅延するとの結果を得た。一方、病理組織学的研究では電極をかこんで壊死層、類壊死層、核濃縮層の3層性変化を示した。DCT後の腫瘍内血管の変化は壊死部では破綻したり血栓形成をみとめた、類壊死層では新鮮な血栓形成が多数にみられ血管充盈も出現した。 つぎに、これらの基礎的研究のうち定電流直流通電法と抗がん剤と併用療法について研究を行った。種々の抗がん剤の帯電性を検査した結果Cyclophosphamide(CPA)とAdriamycin(ADM)の2剤に帯電性をみとめたのでこれらを前記の移植腫瘍に投与したのちDCTを行った。治癒率から検討するとDCTとCPAを併用するとCPA單独投与時の約1/2量でCPA單独投与と同様の効果がみられた。DCTとADMの併用では腫瘍の発育遅延はみられるもののDCTとCPA併用療法ほどの効果は得られなかった。抗がん剤とDCTを併用すると腫瘍内薬剤分布が変化して治療効果が増強するものと考えられた。 ヒト悪性脳腫瘍についてもDCTを行い腫瘍の病理組織学的検索を行ったが、腫瘍の種類により若干の差はあるが動物の実験的腫瘍とほぼ同様の成績を得ている。
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