研究概要 |
高年齢層における骨折の重要な要因に挙げられる骨の老化, すなわち骨萎縮の本態を解明するために組織学的検索をおこなっている. 硬組織という骨自身が有する特殊性のために, 組織標本の作製段階において以下に述べる新しい種々の工夫を考案しているが, 厳密な組織学的計測によって得られる計測値は骨組織に関する加齢変化を客観的にそして定量的に表現する. 1.材料. 剖検例80例より採取した脊椎椎体と腸骨さらに手術時に得られた生検腸骨を用いている. 2.方法. (1), 非脱灰標本による組織学的計測. 採取した椎体ないしは腸骨を中性ホルマリンにて固定し, アルコールにて脱脂脱水後, メチルメタクリレート樹脂に〓埋する. 約200μmから300μmの薄切片を作製する. 従来困難であった脊椎椎体などの比較的大きな試料の大切片の作製が, 教室で現有する硬組織用カッテングマシーンの利用によって容易となった. 薄切片を用手研磨後, 20μm厚のHE染色標本を作製する. 現有の画像解析装置を使用して骨量, 骨梁幅, 骨形成面, 骨吸収面などの計測値を各年齢毎に測定し, 各年齢層における標準値を設定する(2), 免疫組織学的観察. 脱灰標本を用いる. 萎縮骨梁の周囲における血管系の分布度を免疫染色によって定量的に算定する. また萎縮骨梁表面の骨芽細胞あるいは破骨細胞の骨改造に関わる各種酵素活性を測定する. これらの測定値を健常の骨梁における測定値と比較検討する. 3.結果. 加齢と共に海綿骨の骨量あるいは骨梁幅に減少傾向がみられるが, 同一標本においても骨量や骨梁幅の計測値に領域差があること, また骨梁のリモデリングに関わる各酵素活性が加齢と共に減退する傾向にあるが, やはり同一標本においても酵素活性に領域差があることなどが解明されつつある. 以上の加令変化あるいは領域差をもたらす重要な要因に血管系の関与が考えられ, 現在解析中である.
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