Dunn骨肉腫クローンの完全無蛋白質培養上清をCMセファデックス、DFAEセファセル等のカラムを用いて精製し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動上にて燐蛋白であることを証明した。これは分子量約6万の比移動度を持ちゲルからの回収したのちにアルカリフォスファターゼ活性を示した。すなわち骨肉腫クローンの分泌する燐蛋白中で最大の割合を占めるのはアルカリフォスファターゼである。酵素としての諸性質についても明らかにした。 一方腫瘍マーカーと呼ばれる一群の物質が生物学的にどのような意味を持つかという点について、これらをコードする遺伝子群の多様性と予後因子そのもの、特に転移の形成との間に関連を求めることが可能かどうかについて理論的検討を加えた。すなわち予後を決定する因子が多様であり多数の変数に基づいているばかりでなく、腫瘍マーカーの濃度を決定する因子も同様に多数であって、お互いに連鎖不平衡状態による関係を求めるべきでないとの仮説を得た。 実験的にも上記のアルカリフォスファターゼの産生能と肺転移の出現頻度および腫瘍の成長速度との間に相関がない事実をクローン間で示した。以上のような事実から腫瘍マーカーは腫瘍細胞の全体的な分化方向と細胞数を表現するに過ぎないことが結論づけられた。
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