1.キモパパイン注入椎間板の不安定性に関する研究 椎間板ヘルニアの最終的保存療法として椎間板内酵素注入療法が最近日本でも注目されてきているが、生体力学的見地からの研究は少ない。本研究では、椎間板内酵素注入療法(キモパパイン)を施行した腰椎椎間板ヘルニア7症例における注入前後の当該椎間不安定性につき検討した。注入後1〜3ヶ月では、前後屈可動域および回旋可動域は、注入前に比し共に見かけ上減少していた。これは、椎間腔狭小化による後方の椎間関節のロッキングの結果と推察された。注入後1年で椎間高の回復に伴い両可動域とも注入前に近い値まで回復していた。 2.腰椎分離、すべり症における椎間不安定性に関する研究 本研究では、2方向同時X線撮影による3次元解析装置を用い、腰椎分離・すべり症の脊柱回旋可動域を測定し、前後屈機能撮影の結果と合わせ当疾患の病態を解明すべく、その不安定性につき検討した。対象は腰椎分離症10例、分離すべり症10例である。高位はL_46例、L_514例であり、年令は12才〜56才、平均31.6才である。回旋角度の計測にあたり、被験者を基準フレーム内に立たせ体幹を左右に念転した状態にて2方向撮影を行った。得られたX線フィルムを従来より報告しているディジタイザーおよびパソコンを用いた解析装置にて測定し、各椎体の回旋角度を算定した。前後屈角度の計測は、従来の前後屈X線機能撮影の結果を用いた。腰椎分離・すべり症では、平均して当該椎間の前後屈可動域および回旋可動域は増大しており、特に後者で著しかった。また、両者は正の相関を示し、前後屈可動域の値により回旋不安定性もある程度評価し得るものと思われた。
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