研究概要 |
金属材料に水酸アパタイトをコーティングすることにより荷重下においてもインプラントと骨の境界には軟部組織の介在はなく,水酸アパタイトと骨が直接結合することは前年度の研究により明らかにされている。 しかしながら,プラズマ溶射法によるコーティング処理では凹凸面に対して均一なコーティング層が得られず,またその厚さも50μm以上となり骨と水酸アパタイトの境界よりもコーティング層での破綻が懸念される。そこで新しく開発された熱分解法によるコーティングと従来のプラズマ溶射法によるものと比較検討した。因みに熱分解法によるコーティング層の厚さは約5μmであり,凹凸面へのコーティングも容易である。 熱分解法による水酸アパタイト薄膜コーティング金属材およびプラズマ溶射法によるコーティング金属材を作製し成犬長管骨に埋入した。埋入後4週,12週で屠殺し試料を骨ごと摘出し引き抜き試験を行なった。 また試料の一部から非脱灰研磨標本を作製し組織学的観察を行なった。引き抜き強度は埋入後4週では熱分解コーティング材が39kg/cm^2,プラズマコーティング材が42kg/cm^2とほぼ同じ強度を示した。埋入後12週では熱分解コーティング材が37kg/cm^2,プラズマコーティング材が65kg/cm^22の強度を示した。組織学的には熱分解法およびプラズマ溶射法によるコーティング材の周囲に新生骨を認め軟部組織の介在は認めなかったが,直接骨と接している部分はプラスマコーティング材の方が多くみられた。このように熱分解法によるコーティングはプラズマ溶射法に比較して力学的,組織学的に劣っているが,これは水酸アパタイトの他にリン酸三カルシウム等を含有しているためと思われさらに改良の余地を残している。しかしながら,熱分解法によるコーティングは約5μmの薄層コーティングが可能であり,また凹凸面のコーティングも容易なことから臨床応用に際しての大きな利点を有している。
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