研究概要 |
標題研究の前半として本年度は家兎生体にたいする坐位での長軸振動負荷装置による脊椎振動負荷が, 椎間板の物質代謝にいかなる変動を与えるかにつき検討を重ね, これらの結果につき薬物動態解析理論におけるhybrid modelを導入して代謝変調の理論解析を検討した. この理論解析を遂行するに当っての基礎データーは正常家兎30羽に対するトリチウム水追跡により得られたものを基準とした. 1.無麻酔下における長軸振動負荷における椎間板物質代謝の変動. 15羽家兎を負荷装置に設置し25mm落差, 45回/分の振動を30分, 18時間および24時与え3H_2Oの出納を組織分画別に測定した. その結果, 30分負荷でのDisk/PLasna ratio R30は著減し, 更に振動が長期にわたるとR30は各組織分画ともに回復傾向を示し, 代謝回転はこれに順応する傾向が明となった. これら反応はbiexponetial関数に近似し, 組織血流量Q/Vおよび組織血液間分配係数kp値の関数であることを確認した. 特定環境下における生体の情動ストレス, 脈拍増加, カテコラミン放出等は直接的にQ/V, R30の減少が招来するとみられ, ストレスが無視できぬ要因と考えられた. 2.麻酔下における振動負荷. R30は麻酔下においては線維輪各分画ともに有意増加を示すも, 髄核では変動を示さない. ペントバルビタールによる初期心拍出量の増大と末梢血管抵抗の減少, 情動ストレスの消去という状況下からみて, 椎間板のkp値自体には変化は発現せず, 血管床と近接する線維輪にR30の増加をみたことから, 組織血流量が機械的振動によってまきかえす惹起されると考えられた. これらを通じavascular tissueとしての軟骨への振動負荷にもとづく物質代謝の基本を理論的に解明しえた.
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