研究概要 |
肉腫臨床材料18検体を対象として, human tumor clonogenic assayを用いて種々の制癌剤とカフェインの併用効果を検討した. 著名な相乗効果を認めたものは, CDDPで18検体中14件体(78%), MMC及びCPAでそれぞれ18検体中8検体(44%), ADMで18検体中6検体(33%)であり, CDDPとカフエインの併用が最も有効であることが判明した. 又, 肉腫培養細胞での検討では, 既に制癌剤単独で感受性陽性な場合は, 制癌剤の濃度を10分の1に押さえてもカフェインの併用で著名なコロニー抑制を認めた. 尚, カフェインの濃度は2mMを用いた. 相乗効果の発現は, カフェインを約2週間の持続接触させた時に認められ, カフェインと制癌剤の1時間同時接触では相乗効果を認めなかった. VCRとMTXは, 現在までカフェインによる効果増強が認められていない. 次に, 肉腫培養細胞を対象として, 制癌剤とカフェインを併用した場合の細胞周期の変動についてフローサイトメトリーを用いて検討した. 制癌剤の効果が増強される場合は, S期及びG2/M期の集積の解除が認められた. 骨肉腫培養細胞に2.0Mg/mlのCDDPと2mMカフェインを併用した場合, 96時間後には対照に比し90%以上の殺細胞効果を認めた. MMC, CPA, ADMでも同様で, カフェインの併用により殺細胞効果が増強された. 蛍光顕微鏡下に細胞の形態学的観察を行うと, 効果増強が見られた時には, 細胞核の細片化が高率に認められた. このことは, 細胞が分裂を経て死滅していると考えられ, カフェインが, 制癌剤耐性の一つのメカニズムである腫瘍細胞のDNA修復を阻害していることが示唆された. 今後は, in vivoにおいて果してカフェインが制癌剤の効果を増強するかを検討する.
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