ヒトの椎間板に加齢にともなって沈着するアミロイドを生化学的に抽出、精製するため、以下の実験を行った。 (1)脊椎手術の際に得られる椎間板組織(線維輪と髄核からなる)を採取し、-20℃にて凍結保存した。昭和62年度中に約60例の脊椎手術からの切除標本を採取したが、患者の年齢および組織の保存状態からみて、アミロイドの抽出に適当と思われる30例の椎間板組織を選び本実験に着手した。30例の手術から得られた椎間板組織の、凍結下での重量は症例あたり0.2gー4.77g(平均1.60g)総重量は47.93gであった。 (2)組織を液体窒素で凍結し、ステンレス製乳鉢で粉砕した。 (3)Prasらの方法に従い、弱塩抽出により塩可溶性成分を除いた後、蒸留水による抽出を行った。 (4)水抽出で280nmに吸光をしめす、蒸留水可溶性画分を遠沈し、negative stainingを行い、電顕で観察した。 (5)電顕による観察の結果、観察した約100視野のうち、わずか1視野でアミロイド線維の形態をそなえたclusterが観察出来たのみで、その後の生化学的分析を行うに十分な量は得られなかった。 以上の結果より、椎間板組織における加齢に伴うアミロイド沈着は、他の臓器のアミロイドにくらべ、量的にきわめて少ないか、あるいは通常の水抽出では溶出しにくい、局所的要因が存在すると考えられた。
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