研究概要 |
人工関節置換術後の最大の合併症のひとつにいわゆる「ゆるみ」があげられる. 「ゆるみ」の原因は生体力学的な面や生体材料の面から研究され, 人工関節に改良が加えられている. 一方, 生体側からも異物である人工関節に対しては生物学的な反応が生じており, この反応と「ゆるみ」との関連について調査した. 人工関節置換術後「ゆるみ」のために再置換を行った18例から骨と人工関節の間に介在する肉芽組織を採取し, HE標本, 光顕レベルの免疫組織標本, 電顕標本を作成した. この肉芽組織は人工関節側から滑膜表層に類似した表層部, その深層で顆粒状の細胞が集族したり膠原線維間に散在する部位, さらには線維化の強い部位という3つの異った形態学的特徴を示す部分から構成されている. その中で特徴的であるのは顆粒状の細胞の集族巣で, この細胞の起源, 性質について免疫組織学的, 電顕的に観察した. その結果, この細胞は免疫組織学的にHLA-DR, リゾチームが証明され, マクロファージ/単球の抗体である63D3にも陽性でマクロファージあるいはマクロファージ由来であることが示唆された. さらに電顕的に長い細胞突起を出し, 豊富な細胞内小器官を持つなどマクロファージである所見を得た. また, このマクロファージはHE標本では顆粒状の細胞質を持つのがこれはズダンIII染色陽性であった. 以上の所見から, 今後はこのマクロファージの骨吸収あるいは骨破壊を進行させる機序について検討するため, この細胞の持つサイトカインについて免疫組織学的に観察する予定である.
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