人工関節再置換時に採取された18例の組織標本につき、HE染色、免疫染色を行ない、更に電子顕微鏡学的にその細胞構造について検索した。まずHE染色では膜様物は肉芽組織で構成されていた。この肉芽組織のうち、人工関節に接する面は滑膜様組織であり、そしてそれより骨側には、組織球および線維組織に富む層よりできていた。この層に存在する細胞は特徴的で、線維芽細胞以外に紡錐形や類円形をした大きな比較的明るい細胞質をもつ細胞があり、しばしば大きな群をなしていた。これらの細胞は抗マクロファージモノクローナル抗体で染色され、マクロファージ由来の細胞であるのが明らかとなった。また光顕および電怖にて多数の空胞を含んでいるのが判明したが、phagolysosameであるのか、変性壊死に陥る過程なのか同定はできなかった。これらの細胞中には、偏光顕微鏡による観察で、多量のHigh Density Polyethyleneと考えられる砕片が貪食されているものや、骨セメントを貪食していたと考えられる細胞が存在し、これらは電子顕微鏡による観察でも、胞体内に多数のライソゾームやvacuoleが見られ、活発な貪食と消化が行われているものと推測された。これらのマクロファージ系細胞には、骨融解を促進させる作用のあるPGE1やユラーゲメーゼ活性を亢進させる作用がある量が確認されており、一度何らかの原因で「ゆるみ」を生ずるここれらの細胞がそれを促進させるものと考えられた。
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