コラーゲン遺伝子、特にα_2(I)について、骨形成不全症およびエーラス=ダンロス症候群との関係を研究した。研究は大きくふたつの方向から計画した。それらは、1.患者のcDNAを直接解析する。2.完全長のα_2(I)コラーゲン遺伝子cDNAを入手し得たので、これを用いてゲノムDNAの制限酵素多型(RFLP、Restriction Flagment Length Polymorphism)を観察する、の2点である。 1.については、当初計画していた骨形成不全症の患児のほかに、研究途上で偶然エーラス=ダンロス症候群の患者も入院したため、これも加えることとした。エーラス=ダンロス症候群においてもコラーゲン遺伝子上の欠陥が証明されていたからである。しかしながら、この二人の皮膚を培養していると既に汚染を生じ、結局コラーゲンmRNAは分離できなかった。同時に進行していた他の研究では、mRNA分離以降のクローニングまでうまく進行したので、この研究も冒頭の皮膚の組織培養さえクリアすれば、あとは方法論的には可能であると考えられた。患者との接触はまだ続いているので、皮膚採取のチャンスがあれば直ちにまた研究再開の予定である。 2.については、米国ジェファーソン大学のDr.Kuivaniemiより完全長のα_2(I)コラーゲン遺伝子を供与されたので、これを用いて観察することにした。しかし、まだ正常の日本人集団の報告さえないので、まずこれを決める必要があった。そこで、大分日赤血液センターの好意を得て、約150人分の白血球浮遊液の分与を受けた。これらは献血として採血されたもので、正常日本人集団として適切であると思われた。これらから一人分づつDNAを分離し、そのRFLPを観察した。このなかで、まず制限酵素EcoRIによるもののみについて、学会での報告を予定している。
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