大腸菌感作により家兎に関節炎が発症することを報告してきた。NZW家兎雌の背部筋肉内に大腸菌0:14株100℃、2時間加熱死菌2mg/2mlを月1回の割合で投与し、4カ月の短期感作および8〜10カ月の長期感作を行った。家兎膝関節に対して、HE染色および螢光抗体法を用いたIgG、fibrinogenの染色を行った。短期感作(4カ月)で滑膜表層下の浮腫が50%(16/32膝)、リンパ球浸潤が31.3%(10/32膝)、パンヌス形成が16.7%(6/34膝)に認められた。長期感作(8〜10カ月)では表層へのIgG沈着が55.6%(20/36膝)、fibrinogenの沈着が58.8%(10/17膝)に生じた。一方リンパ球浸潤は61.1%(22/36膝)に認められ短期感作より有為(p<0.05)に高率であった。血清中には感作後3週よりリウマチ因子様物質(以下RFLS)が出現し始め、感作4カ月では90.9%に陽性となった。感作開始後8週以前の早期に陽性となる群(RFLS早期陽性群)と8週以後に陽性となる群(RFLS後期陽性群)とに分けると、膝関節滑膜におけるリンパ球浸潤の陽性率はRFLS早期陽性群では81.2%(9/11羽)と、RFLS後期陽性群の18.2%(2/11羽)に比し有意(p<0.05)に高かった。 以上の結果より大腸菌感作家兎は、何らかの機序をもって滑漠の血管透過性の亢進が生じ急性関節炎を繰返し、長期感作を経てリンパ球浸潤を得、慢性関節炎を形成するものと推察された。さらに本関節炎発症の一条件としてRFLSの長期にわたる血清中での存在が重要であると考えられ、さらにRFLSを大腸菌の感作早期より産生せしめうる未知の固体的素因も本関節炎発症に深い関係があるものと推察された。
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