大腸菌感体期間が長期(8〜10ヶ月)の家兎において、蛍光抗体法および酵素抗体法により滑膜表層におけるIgGの沈着が36膝中20膝(55.6%)、滑膜へのIgG陽性の形質細胞浸潤が36膝中9膝(25.0%)に認められた。さらに軟骨にパンヌス様組織が36膝中10膝(27.8%)に認められ、このうち10膝にはIgGの局在が観察された。また軟骨の表層変性が36膝中8膝(22.2%)ありこのうち5膝にIgGの局在が認められた。以上長期感作を行った家兎の屠殺時の血清リウマチ因子様物質(RFLS)の陽性率は88.9%(16/18羽)であった。これらの事実より滑膜および軟骨表層へのIgG沈着は血清因子としてのIgG-RFLS免疫複合体の可能性が示唆され、さらに一部局所滑膜にて産生されたIgGもこれに加わり慢性炎症巣を形成するものと考えられる。慢性関節リウマチ(RA)においては、軟骨組織内にリウマチ因子および抗コラ-ゲン抗体の局在が認めれており、これらが関節内に長期間とどまることによってRAの自己再燃性および慢性化が生じるとする説がある。さらにこれらの抗体および免疫複合体が局所での軟骨破壊に一定の役割を果たしている可能性も考えられる。したがって本関節炎においても軟骨表層に局在するIgGの抗原特異性を特定することが大切である。したがって今後は感作家兎の軟骨より免疫グロブリンを抽出し酵素抗体法(ELISA法)によりIgGおよびIgMリウマチ因子、抗I型および抗II型コラ-ゲン抗体、抗プロテオグリカン抗体等の定量を行い、さらに検索を進めることが重要と思われる。これらの結果から、本実験関節炎の人RA関節炎への強い類似性および、慢性炎症の持続性の機序、軟骨・骨破壊の進行機序を解明しうるものと思われる。同時に人RA関節炎発症機序、発症の原因についても解明の糸口を確得しうると思われる。
|