大腸菌感作により家兎に関節炎を発症せしめその病態を解析してきた。NZW(ニュ-ジ-ランドホワイト)純系家兎雌の背部筋肉内に大腸菌0:14株100℃、2時間加熱死菌2mg/2mlをFreundの不完全アジュバントと等量混和した抗原液を月1回の割合で投与し経時的に観察した。 膝関節滑膜における組織学的変化では、短期感作(4カ月)で滑膜表層細胞の多層化は62.5%(20/32膝)、表層細胞下の浮腫は50.0%(16/32膝)、滑膜表層におけるフィブリノイドの沈着は59.4%(19/32膝)、滑膜へのリンパ球浸潤は31.3%(10/32膝)に認められた。長期感作(8〜10カ月)では表層細胞の多層化は80.6%(29/36膝)、浮腫は75.0%(27/36膝)、フィブリノイド沈着は61.1%(22/36膝)に認められた。滑膜へのリンパ球浸潤は61.1%(22/36膝)と短期感作家兎に比べ有意(P<0.05)に高い出現率を示した。膝関節軟骨および関節半月の変化は、短期感作(1〜4カ月)で軟骨表層の変化は0%、パンヌス様織の侵入は17.6%(6/34膝)に認められた。一方長期感作(8〜10カ月)では軟骨表層の変性は22.2%(8/36膝)、パンヌス様組織の侵入は27.8%(10/36膝)に認められた。血清中リウマチ因子様物質は感作開始後3週より出現し始め、15週では90.9%(20/22羽)に認められた。血清中リウマチ因子様物質が8週以前の早期に出現した家兎では滑膜へのリンパ球浸潤は81.2%(9/11羽)で、8週以後の後期に出現した家兎の18.2%(2/11羽)に比べ有意(0.05>に高い出現率を示した。また長期感作例では、滑膜表層にIgG沈着が36膝中20膝(55.6%)、滑膜でのIgG陽性形質細胞浸潤は36膝中9膝(25.0%)に見られた。 以上大腸菌感作家兎関節炎の経時的病態変化が明らかとなった。本関節炎は慢性関節リウマチに類似しており有用な疾患モデルである。
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