研究概要 |
椎間板基質の主要構成高分子であるコラーゲン, プロテオグリカンは多量の結合水を有し, 水分子の自由な拡散を制限し基質内に水分を保持する役割を演じている. 椎間板内水の拡散は基質高分子の構造と組成を反映すると考えられる. このことを明らかにするためNMR法による椎間板内水の拡散係数の測定システムを作製した. バルスグレージェント磁場発生装置を日本電子(株)製JNM-FSE-60E型NMR装置とオンライン化し, NMR装置のRFパルスと磁場勾配バルスをマイクロ秒の時間分析能で同期化した. スピンエコーNMR法における90°と180°RFパルス間にパルス磁場勾配をかけることにより, エコー信号強度は磁場勾配の大きさと時間に依存して減少した. この減少の程度は水分子の拡散が大きいほど増加した. 本測定システムを牛尾椎々間板髄核と牛膝間接軟骨に適用し, 軟骨組織内の水分子自己拡散係数を求めるための測定条件を検討した. この結果, RFパルス間の間隔は20〜40msecの間で一定とし, 磁場勾配の大きさは変化させず, 磁場勾配を与える時間を1〜10msecで変化させる方法が精度の高い拡散係数を得るのに良いことがわかった. また, 牛尾椎々間板髄核内の水分子の拡散係数は純水中の拡散係数の約30〜35%に低下しており, 牛膝間接軟骨内水のそれば純水の約23〜28%に低下していた. これらの組織内の拡散係数は, 組織の水分子含有率とグリコサミノグリカン密度に強く影響された. 水分含有率の増加に伴い水分子の拡散は増大し, グリコサミノグリカン密度の増加に伴い水分子の拡散は減少した. 軟骨組織の水分保持能力と水分子拡散の関係が示された. 以上の内容の一部は第2回日整会基礎学術集会にて報告した. NMR法による椎間板内不凍水の定量は, 液体窒素を用いた温度可変NMRプローブを使用する必要があり, 現在プローブの試作中である.
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