研究概要 |
多関節ロボットを用いた動物実験により, 力の方向と骨癒合の阻害の関係を検討した. 実験動物として家兎を選択し, 力学的条件を均一にするために, 実験の全期間にわたり, 全身固定した. 骨折を作用する左の下肢には, 創外固定をした. 固定の後, 左脛腓骨骨幹部に骨折を作成した. 骨折を作成した翌日から, 多関節マイクロロボットを用いて, 骨折部にくり返しの, 圧縮刺激(最大圧縮力4.2N), ねじり刺激(最大ねじり角0.02rad), 曲げ刺激(最大曲げ角0.02rad)を連日1時間あたえた. また, 対照群として, 刺激をあたえない家兎を2羽飼育した. 骨癒合度の測定は, 同様のロボットを用いたin vivoでの骨折骨の剛性試験によった. 左脛腓骨に施した創外固定器の遠位側をロボットアームに固定し, 静に骨折部の固定を解除した. その後, 骨に微小なねじりをあたえ, ねじりモーメントとねじれ角の関係から剛性を算出した. この剛性試験を骨折前に1回, 骨折後は3日に1回程度行った. また剛性試験と並行して, X線撮影を行った. 無刺激のもの, および圧縮刺激をあたえたものは, 骨折後10日ほどで剛性が増加し, 30日後は骨折前の値と等しくなった. X線像でも癒合を認めた. ねじり刺激をあたえたものの剛性値は, 骨折前に比べ, 治癒の全期間を通じて0.1倍以下であった. X線像からも, 多量の骨膜性仮骨はみられたが, 癒合は認められなかった. 骨採取後の軟X線写真, および組織写真から, 偽関節状態であることが判った. 曲げ刺激をあたえたものは, 15日あたりで剛性が上昇するが, その後, 剛性値が下り, 骨折前に比べ, 0.3倍以下をとった. X線像, 組織像からも癒合はみとめられなかった. 本条件のねじり刺激, 曲げ刺激は, 骨癒合を阻害すること, 圧縮刺激は, 癒合に影響をあたえないことが判った.
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