研究概要 |
ショック増悪因子として注目されるPAFの生理活性発現にはアラキドン酸カスケードとの相互作用が重要な因子となる. 特に小動物(ラット)においては血小板にPAF受容体が存在しないことから, 白血球膜由来のPAFとロイコトリエンの相乗作用が重要な働きをすると考えられる. 今回, この点の解析に抗癌薬(ビンブラスチン)を投与して白血球を減少させたラットを利用した. ラットにE.coli lipopolisaccharide(LPS)5mg/kgを腹腔内に投与すると48時間以内に80%が死亡する. LPS投与による死亡率はPAF拮抗薬の単独の前処置では減少しないが, PAF拮抗薬とLT拮抗薬の両者を併用すると死亡率は30%以下と有意に減少する. その主な作用点はLPSによる血管透過性の〓進が阻止されることによる. 一方, ビンブラスチンの投与により白血球の減少したラットではPAF拮抗薬やLT拮抗薬を前処置しなくてもLPS投与による死亡率は36%と低い. また, 両拮抗薬を前処置してもそれ以上死亡率は低下しない. ビンブラスチン投与一週間後には白血球が正常ラット以上に増加するが, この時点でLPSを投与すると死亡率が著しく高くなる. これらの結果はLPS投与による生死に白血球由来のPAFおよびLTが強く関与していることを示唆する. ラットではLPSを50mg/kg以上の大量を投与しなければ死亡直前まで血圧は殆ど低下しないことから, 今回のLPS投与ショックモデルにおけるPAFの作用は循環系への作用よりも, 白血球を介した悪循環形成が主因な因子と考えられる.
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