血小板にPAF受容体を持たないとされるラットを用いて、エンドトキシンショックにおけるPAFの活性を検索した。PAFを静注するときわめて微量でも急激に血圧が下降する。この作用樹序には血管透過性亢進、心筋収縮力の抑制などが考えられる。特に注目されるのは強力な血管透過性の亢進作用であり、これに引きつずいて循環血液量の減少、末梢循環不全、血小板の凝集、肺水分量の増加などショックに類似する反応が誘発される。エンドトキシンショック時に放出されるPAFは単独でも上記のような強い活性を発現するが、アラキドン酸カスケード、とりわけロイコトリエン(LT)と合成系のみならず生理活性においても相乗作用を持ち、ショック増悪に働く。このため、PAFまたはLTの拮抗薬を単独に用いても有意な抗ショック作用は認めがたい。一方、PAFとLTの拮抗薬を併用するとショック動物の生存率が有意に改善され、血管の透過性亢進、肺の水分量増加、ガス交換能の悪化なども防止されることか確認された。 ビンブラスチン投与により白血球の減少したラットではPAFやLT拮抗薬を投与しなくてもエンドトキシン投与後のヘマトクリットの上昇や肺のガス交換能障害が軽微にとどまった。これらの成績はエンドトキシンにより白血球が活性化され、PAF及びLTの放出を促し、臓器障害に働くことを示唆する。
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