1.ハロセン麻酔中、カテコラミンの使用はしばしば重篤な心室性不整脈を誘発し、心室細動に至ることはよく知られている。近年、心室細動は心筋内カテコラミン蓄積の増大によって惹起することが示唆されている。本研究の目的は、ハロセンによる不整脈が、心筋内カテコラミン蓄積の増大によるものであるという仮説を証明しようとするものである。 2.摘出ラット心臓をランゲンドルフ法にて灌流し、心電図のモニターを行なった。吸入麻酔剤を飽和させた灌流液で心臓を灌流した後、イソプロテレノールを灌流液中に加え、30分間更に灌流を行なった。この間の不整脈の発現頻度およびイソプロテレノールの心筋内蓄積量を測定した。 3.その結果、ハロセン2MAC(1.5%)及びエーテル2MAC(3.8%)ではカテコラミンを灌流しない時には心拍数の変化および不整脈はみられなかったが、カテコラミン灌流時には、ハロセン群では全例に心塞性不整脈がみられ、エーテル群では不整脈は一例もみられなかった。又、イソプロテレノールの心筋内蓄積量は、ハロセン群では対照群に比べ有意に増加したが、エーテル群では、差がみられなかった。 4.以上の結果により、ハロセンによる不整脈発生機序は、心筋内カテコラミン蓄積が関与していることが強く示唆された。しかし、本研究では、一定時間後のカテコラミン蓄積量を測定しているため、不整脈発生時におけるカテコラミン蓄積量に関しては不明である。従って、今後経時的なカテコラミン蓄積量の変化を各種吸入麻酔剤を用いて検討してみる必要があると思われる。又、カテコラミン蓄積機構の3つの過程である1)取り込み過程、2)代謝過程、3)単純拡散過程のどの過程にハロセンは作用しているか検討する必要がある。
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